■新栄養週期栽培法 | |||||||||
1)はじめに 2)栄養週期栽培法 3)栄週の再現性 4)問題点(苦土 5)問題点(土壌) 6)問題点(尿素) 7)新栄週の命名根拠 新栄週の理論体系 1)ソースシンク理論 2)人間と作物 3)人間と作物2 4)栄養と分化生長) |
5、栄養週期栽培法の問題点(土壌養分蓄積量) 土壌養分の蓄積については1945年当時の分析データはありませんが、おそらく蓄積養分が非常に少なかったことが予測されます。 過リン酸石灰の追肥による、花芽の形成は蓄積養分が40kg程度では十分な追肥の効果が達成できると思われますが、過リン酸石灰、熔リン、骨粉などを多投してきた土壌においては、240kg/100トンの土壌は珍しくなく、400kg以上のリン酸蓄積のハウス土壌も多く見受けられます。 リン酸の多投は、初期成育の発根を良好にし、初期成育から生殖生長型に導くことが容易で、数十年以上の栽培履歴の圃場では、多少の差はありますが120kg以上の蓄積は一般的と思われます。 栄養週期栽培法のひとつの要である、リン酸の単独的効果を高めるP/Nの一時的上昇を将来する、リン酸追肥は、40kg程度のトルオーグリン酸の蓄積状態で可能となり、120kgを超えるリン酸蓄積土壌に、過リン酸石灰40kg(P=7kg)の追肥が良好な結果を将来することが難しくなったと思われます。 リン酸などの追肥作業において栄養週期では、 ”降雨を待って、降雨の後” などの記載がありますが、少雨の年に適期の追肥などは至難の業で、現在において果樹園に潅水設備を装備しているならまだしも、天候任せの追肥を期待するよりは、秋の農閑期にリン酸施肥を行うことが慣習化したと思われます。 また、実際に本多さんと過リン酸石灰の追肥を行いましたが、散布しても溶けるまでに結構な時間を要し(2週間程度)適期の施肥は非常に難しく、特にブドウにおいては、追肥の効果は全く再現認識できませんでした。 元肥優勢化し120kg以上にリン酸蓄積した圃場では、P/Nを一時的に高める方策は、リン酸だけを鑑みても難しいと思われますが、リン酸蓄積と同じように主に蓄積させてしまうのが、カリウムであります。 リン酸の単独的効果を邪魔するのが、P/Nである窒素のように思われますが、実際の筆者の認識ではむしろカリウムの贅沢吸収が樹態を栄養生長に向かわせる効果が著しく、K/Nが高まりすぎることで、栄養生長を誘発することに問題があります。 栄養週期栽培法が基本とする、 ”無肥料出発” は、完全に枯渇した肥料分で行うことを求めているわけではなく、堆肥などの投入も ”ごく腐った物” 等と示しており、肥料成分を全く投入しないわけではありませんし、一番無肥料を必要とする窒素成分においても、ミニマム窒素(Nm)の存在を事あるごとに示す場合が多いですが、そのミニマム窒素の明確な量(kg/10a)を示しているわけではありません。 まして、リン酸やカリウムの土壌蓄積について明確な表現は実在しませんが、使用する資材が、リン酸であれば過リン酸石灰のみであることから明確なことは、熔リン、苦土重焼リンの元肥施用が行われていた時代ではなく、無リン酸での追肥の効能や、曇天時のカリ投入の効能が、リン酸とカリウムの土壌蓄積が増える頃より、無肥料出発の幻想が潰えたと思われます。 それは、栄週による無肥料出発と追肥作業を行うことの大変さと結果が、ク溶性リン酸の元肥使用のほうが簡単で明確に収量がUPしたためで、実際に昭和35年以降に水稲に熔リンの投入を慣例化することで、東北地方の悲劇的な冷害の回避を実現できていることからも考察できます。 元肥主義の土壌養分の蓄積は、いつしか追肥法の栄週の再現性を失わせ、”過去の技術”と言われるようになってしまいました。 6、栄養週期栽培法の問題点(尿素と硫安) へ進む |
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